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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(一)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 246,214 字 · 495 頁
「おゆるしください」
刎ね起きて、
「とは知らず、直義の小心から推量などして、雑言を吐きちらし、申しわけもございませぬ」
と、彼は手をつかえ、高氏はその肩につかまって、共に起きて、草に坐り直した。
「したが、直義。わしの心底はまだ、父上にも伯父上にも、いうてはいない。洩らすなよ、誰にでも」
「が一人、右馬介だけは、とうにお胸の奥を読んでいましょう。折々の便りにも、彼が未来にかけている心がけがみえまする」
「オ。右馬介はいま、どこにいるのか」
「兄者人へは、便りもよこしませぬか」
「以来、何も」
「要心ぶかく、わざと、書状などひかえているのでございましょう。――昨今、摂津ノ住吉辺に、小店を構えて、武具馬具の修繕いなどを、表むきの生業として、それを手ヅルに南都、叡山の僧兵やら、諸家へも出入りして、宮方のおうごきなどを、密と探っておるよしにござりまする」
――しっと、高氏は眼で、彼の次のことばを抑えた。どこかで、女性のまろい声が澄んだ尾を曳いて流れてくる。
たれかを、呼び求めつつ、丘の繚乱な秋草の中を、こっちへ近づいて来るものらしい。すると、二人の位置から遠からぬ草むらのうちでも、