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しほんたいへいき

私本太平記(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(一)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 246,214 字 · 495 頁

青空文庫

又太郎高氏殿の妻――」と。

舅の貞氏や清子とも、今朝は水入らずの朝餉を共にし、若い夫妻は、やがて輿をつらねて、赤橋守時の邸を、訪問した。

いわゆる五日目の“里帰り”であった。

登子は、良人と姿を並べて、兄のひとみの前に出たとき、わけもなく頬から耳の根までを紅らめた。守時は、ふたりの仲を見とどけたように、それを眺めて安心した。

さすが北条の大族赤橋家らしい。――登子のいとこ、駿河太郎重時、兄の赤橋将監英時はじめ、塩田、桜田、大仏、名越など、いずれもゆゆしい身寄りばかりである。こもごも、

「これは、聟殿におわせられるか」

と、名のって出た。初対面が、あらかたである。

中でも、眼をひかれたのは、登子の妹たちだった。二人の幼い妹たちは、姉の聟君なる人を、もの珍しげに、ぬすみ見たり、はにかんだり、やがては馴れて、酒宴の間に戯れつつ、高氏の杯に、銚子を持って、おぼつかない手つきで注いだり、笑い興じて廻ったりしていた。

後に、この妹の一人は、洞院ノ大納言の室に入り、もひとりの妹は、太政大臣公守の側室となった。――しかしそれはずっと後年のこと。高氏すらも、この日、このあどけない姫たちの未来に、そんな運命が待とうなどとは思いもおよぼうわけもない。