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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(一)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 246,214 字 · 495 頁
そのため九州探題の下には、博多警固番をおかれ、常時、沿海の防禦にそなえておりまする。が、しばしば異な船影を認めるたび、すわ、元兵の襲来ぞなどと、九州鎌倉の往還を、あわてた早馬がムダ駈けする例も、ままございますのでな」
「それとの、誤聞だろうと申すのか」
「おそらくは」
「ばかな」
「ちがいましょうか」
「ちがう。大違いだわ」
又太郎は、一歩も待つなく――
「ともあれ、異変の兆しは、蝦夷の空だ。仔細は船宿で話してくれる。はやく参れ」
時乱に敏感なのは、いつのときでも、官辺よりは民衆だった。彼らのつたえる風聞には、公な文書だの早馬だのという手間暇なしに、おそろしい直感力と風速を持っている。
つい今。――又太郎が小耳にはさんだのも、それなのだ。
奥州北津軽から、四国へ帰るという一僧侶が、長柄の船待ちで、しゃべっていたものである。
津軽の豪族、安藤季長、安藤五郎、ほかすべての一族同士が、各※(二の字点、1-2-22)、伝来受領の領域を争いあい、ついに陸奥一帯に布陣し出したということだった。
いや、一僧の言だけでなく、べつな旅商人らしい男も、
「なんのなんの。もう諸所では合戦の最中だ。