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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(三)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 頁
そして、天下は帰一するが、その間にも、猿のごとき何者かが、一時は天下を盗む。けれどそれも長くはない……。やがては真の万民泰平が返ってくる。
「なんと、おどろくべきではないか。釈尊は遠き末世を予言しておられたが、わが上宮太子も、すでに四天王寺創建のころ、今を見とおしておられたのだ」
中院ノ俊秀は、自分の弁に酔うがごとく、頸すじに汗をしたたらして、なお弁じた。
兵たちは、感心した。奇瑞をよろこぶ風である。またみな予言が好きである。多分な迷信の中に生かされていた人々だった。蒼古な四天王寺の輪奐もそれを援ける。
だが、奇瑞や予言をつかうのは兵家のつねだ。これも正成が士気昂揚のための一計であったろう。正成でなければ、正成の蔭の援護者だった龍覚房の智か、または天王寺中の秋ノ坊に深く隠れていた別当ノ大僧正などが、案外、その作者だったかもわからない。
「なんの狐疑を」と、宇都宮公綱は、兵七百の先に立って、
「おれにつづけ」
と、渡辺橋を駈け渡った。
天王寺の楠木勢が総退却したと、今朝知ったからだった。
「またぞろ、楠木の詭計かもしれませぬぞ」
さきの隅田、高橋の例もある。