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しほんたいへいき

私本太平記(三)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(三)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 222,108 字 · 446 頁

青空文庫

と、せせら笑った。

「朝廷朝廷と、公卿はいうが、そんな公卿念仏を、たれが今どき、ありがたがろうか。――事ごと、鎌倉殿の下に、からくも、あがめられている飾り物の朝廷であろうがな。おれどもは、武士だ。朝廷の禄一ト粒食ったことはない武士だ。――四の五を吐かさず、つつしんでうけたまわれ」

と、圧倒し、

「上意っ」

と、かさねて言いかぶせた。

やはり具行は公卿だった。「――無知にはかなわん」といいたげに、そのまま口をつぐんでしまった。

とつぜん、伊吹の雲の破れから、冷たい疾風が、裾野をなぐッて、襟もとを打つ。俄に、晩のような暗さを見てのせいか、昼のきりぎりすが啾々と啼き立ち、どこかでは遠雷鳴が、いよいよ空の形相を、具行の胸そのもののようにしていた。

「……前ノ源中納言具行ハ」

玄蕃は、執権奉書を披いて、彼への、死罪の申し渡しを、高々と、読み出している。

一句一句、声を張っても、声は風にちぎられて飛び、雷鳴に消されがちだった。

「……以上」

と、彼がむすんだとき、

「この上は、お覚悟を」

と、ややいたわり気味に言ったのは、田子六郎左の方だった。すぐうしろの、まろい小丘の一本松を指さして、