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しほんたいへいき

私本太平記(五)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁

青空文庫

する風で、あえて当事者へ諂うようなことはない。

ところが。

じっさいには、実績以上な分外の恩賞にあずからんとする者ばかりが、百人中で九十人の上だった。――だから、いくたび朝議にかけても一決せず、朝廷も裁決にこまって、ついに実世を免官とし、大納言万里小路藤房を、その任にあたらせた。

藤房は、公平厳正な態度で、査定にのぞんだ。

しかし、その結果は、ついに藤房をも「……ああ」とサジを投げさせてしまったのだった。なぜなら、縁故の手づる、見えすいた贈賄、後宮の女性の口出し、あらゆる浅ましいもののがんじがらめにされてしまい、藤房の潔癖では、到底、その処理もなしえず、やがて辞任を申し出る始末とはなった。

で、ついに恩典局の上卿は、三たびその人をかえて、九条光経におちつき、やっと近日その発表をみるであろうといわれていたさいである。――その九条殿の邸へ、高氏が急に召されて行ったとは、何の用か?

「…………」

草心尼とさりげなく話しながらも、義貞の心は、ついそんな気がかりにもとらわれていた。

――いつか山海の珍味や酒は客座に運び出されており、ほどなく、細殿のすだれが小姓の手で捲かれた。