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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《私本太平記(五)(しほんたいへいき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 252,330 字 · 505 頁
それから、二た刻ほどたつと、ここの水亭の景は、まったく昼とちがっていた。
堀川、六条、紅梅ノ辻子、そのほか方々の妓家からよび集められた一流の遊君たちが、ここをうずめていたばかりでなく、脂粉の園は狼藉をきわめ、酒に飽き、戯れ口に飽き、芸づくしに飽き、やがては、
「賭けよう。なんぞおもしろい賭はないか。褒美を出すぞ。何か、考えろ」
と、道誉の称い出しだった。
「ま、ほんと」
「ほんとだとも」
「ごほうびには、いったい、なにを下さるの」
「なんでもやる」
「お小袖。布。伽羅の油」
「そんな物代ではつまるまい。現金をやる。ほれ、ここにこう積んでおく」
あらかじめ彼が用意をしておいたものだろう。大ぶりな文庫をそばへ取りよせさせ、そのふたを開いてみせた。新しい銭札の楮幣がいっぱいにつまっていた。……しかし彼女たちは、顔見合せたきりで、何の昂奮もあらわさなかった。
「女たち。知ってるか」
道誉は、手の切れそうな楮幣の一ト束を函から取って、
「これは紙の札だが、かねとして費えるものだ。いわばお上のご証文、楮幣五百文は銭五百文と同様に通用する。……さ、これをここへおく。勝った者への褒美にだ。