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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 156,866 字 · 318 頁

青空文庫

二

平次は樫谷三七郎を見上げました。

「すぐ解ったよ、馬道の糸屋、出雲屋の若主人宗次郎だ」

「ヘエ――」

「茶番の仲間が、宗次郎が斬られるとすぐ駆けつけた。これがそうだ」

樫谷三七郎が顎で指すと、少し離れて、虚無僧が一人、留め女が一人、薄寒そうに立っているのでした。

そのうちの虚無僧は、巡礼姿の宗次郎を斬った疑いを被ったのでしょう。特に一人の手先が引き添って、スワと言わば、縄も打ち兼ねまじき気色を見せております。

次第に銀鼠色に暮れ行く空、散りかけた桜は妙に白茶けて、興も春色も褪めると見たのもしばし、間もなく山中に灯が入って、大きな月が靄の中に芝居の拵え物のように昇りました。

陰惨な、そのくせ妙に陽気な、言いようもない不思議な花の山です。

「旦那、少し訊いてみたいと思いますが――」

平次は樫谷三七郎を顧みました。

「何なりと訊くがよい」

「では」

平次は茶番の仲間を一とわたり眺めやります。

二

「お前は?」

一番先に眼を着けたのは、天蓋だけ払って青白く佇んだ背の高い虚無僧でした。

「ヘエ、同じ町内の兼吉と申します、油屋渡世で」

「知ってるだけを話してみるがよい」

平次の調子は冷たくて峻烈です。