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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 156,866 字 · 318 頁

青空文庫

八

与力笹野新三郎は、万事を平次に任せて、朝のうちに引揚げてしまいました。

「ところで、八はどうしているだろう。この騒ぎにも起き出さないのは、よっぽど疲れたのかな」

平次は『さざなみ』へ行ってみました。手を掛けると、締めたはずの表戸はわけもなく開いて、サッと射込む朝の光の中に、布団で昆布巻にされた上、丁寧に猿轡まで噛まされたガラッ八が、階子の下まで転げて来て、情けない眼を光らしているではありませんか。

「馬鹿野郎、なんてエざまだ、一人前の岡っ引が――」

平次は大叱言を浴びせながらも、表戸をピタリと締めて、手早く八五郎の縄と猿轡を解いてやります。この浅ましい姿を人に見せたくなかったのです。

八

しかしこの失敗は事件のクライマックスでした。萎れ返るガラッ八を連れて神田の家へ引揚げて来た平次は、それから四五日、物も言わずに一と間に籠ってしまったのです。

「親分は?」

お勝手口から臆病らしく顔を出した八五郎が、拇指をそっとお静に見せたのは、十日の昼過ぎ。

「相変らずよ。腕組みをして、唸ってばかりいるんですもの、――何とかして下さいな、八五郎さん」

恋女房のお静も、すっかり持て余し気味です。