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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 156,866 字 · 318 頁

青空文庫

三

脇差に気を取られて、羽掻締めが緩んだのでしょう。もっとも、脇差は幸いガラッ八の手に残って、曲者は素手のまま、唯一の逃げ道なる表口へ飛付いたのです。

「待て待て」

続くガラッ八、伊三松、多勢の番頭手代小僧。

「えい」

曲者が振り返って、頬冠りの中から一と睨みすると、それも大方は逃げ散って、ガラッ八の手が僅かに顔を包んだ手拭に掛ります。

が、曲者にどんな業があったものか、脇差の鞘が宙を飛んで、手燭を持った小僧の額を打ちました。

「あッ」

見事に仰け反って、手燭は消えます。

「御用ッ」

「逃げるなッ」

一瞬にして、闇の中に大混乱が起ったのです。相撲つ肉の音、絶叫、悲鳴、それは闇の鳥屋の中へ棒を入れて掻き廻すような騒ぎでした。

「捕った捕った」

高らかに響くガラッ八の声。

「畜生ッ、離せ、何をするッ」

その下に泥を嘗めながら喘ぐ声は誰とも解りません。

第二の灯が用意されました。野分の後のような大混乱の店先に、ガラッ八の糞力に組み伏せられて、フウフウ言っているのは、誰あろう、石原利助の一の子分、伊三松の忿怒に歪む顔だったのです。

三

「昨夜は大層な手柄だったそうだな、八」

「ヘエ――」