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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 156,866 字 · 318 頁

青空文庫

五

芸事に対してあえて芸術とはいわない――俺だけが彫心鏤骨の苦心をしていると自惚れる人間は、私だけが熱烈なる恋をしていると思い込む芸者と、あまり大した違いのない低能である。

また「消耗品の芸術論」になりそうであるが、私はいつでも、いかなる世界でも、職業と、それに打ち込む労作を尊む、俺だけが芸術家だと思う人間は、消えて無くなった方がよろしい。昔から、そんな者はろくな仕事をした例はないのである。

五

木村名人は私に訊ねたことがある。「あの平次の夥しいトリックは、どうして拵えるのだ」――と。木村名人は私の心友の一人である。私は将棋の駒の並べ方も知らないが、木村名人とは二十年も机を並べた間柄で、あの聡明さと、江戸ッ児らしい気前と、情誼のこまやかさには敬服している。

余事はさておき、私はこの問に対して、「それはなんでもないことだ、将棋さしが詰将棋の手を考えるのと同じことだ、木村名人が生涯に三百題の詰将棋を考えたところで、少しの不思議もないではないか」――と。

捕物又は探偵小説のトリックは、もう一つの例を挙げると、数学の教科書の問題を作るのと同じことだともいえるだろう。