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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 156,866 字 · 318 頁

青空文庫

四

そこには十九になるお糸が、木綿の不断着のまま赤い簪を顫わせて泣いているのです。

「…………」

平次はしばらく黙って見ておりましたが、誇りを傷つけられた処女に、何を言ってやったところで、無駄だと思ったものか、

「八、お糸さんを家へ送って行くがいい、後から俺も行くから」

八五郎を顧みて、率直に言います。

「ヘエ――」

ガラッ八はほんの少しばかり躊躇しました。泣き濡れてはいるものの、この時不思議そうに顔を挙げたお糸は、全く美し過ぎたのです。

平次はそれから、養い娘のお幾に逢いました。これは世間並の平凡な娘で、踊は天才的だと聴きましたが、きりょうは一向つまりません。

その上、金五郎とは藁の上から一緒に育って、兄妹としての愛情しか感じないらしく、お糸との濃やかな仲を見せられても、一向無関心でいられる様子です。

店の者にも一と通り逢って、

「蝉丸の香炉はこの家から出た様子はありません。無くなってまだ半日も経たないんだから」

平次はこう結論するより外にはなかったのでした。

四

間もなく平次は、与次郎の古道具屋に現われました。

「有難うございます。親分さんのお蔭で、娘も無事に戻りました。