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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 156,866 字 · 318 頁

青空文庫

二

最初から順序を立てて、詳しく聴かして貰おう」

平次は縁側へ腰をかけたまま、煙草盆を引寄せました。

二

御徒士町の研屋五兵衛は、一介の町研屋から身を起して、後には武具刀剣万端の拵えを扱い、七間間口二軒建の店を張って、下町切っての良い顔になっておりました。

その大名高家への連絡を取ったのは、根津の大町人、公儀御用達を勤むる石川良右衛門で、諸大名はいうに及ばず、公儀御腰物方の御用までも取次ぎ、長い間ともどもに結構な利分を見ていたのでした。

その研屋五兵衛が、昨夕酉刻半(七時)過ぎ入谷の寮で、直刃の短刀で左首筋を貫き、紅に染んで死んでいたのです。

「まだ宵のうちで、あんなに暖かい晩ですから、父は自分の部屋の格子窓を開けたまま、火鉢の側で何か考え事をしていた様子でした。お絹さんは風呂へ入っておりましたし、私はお勝手で下女を相手にお仕舞をしておりました。あんまり奥が静かなので、妙に気になって行ってみると――」

お糸はゴクリと固唾を呑みます。

「父親が死んでいたのだね――そのお絹さんというのは何だえ?」

「あの、父の――」

「そうか」

要領を得たような得ないような問答ですが、これだけで、お絹というのは、五兵衛の妾ということがわかります。