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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 156,866 字 · 318 頁

青空文庫

五

「騒ぎのすぐ後なら、楽に逃げられたはずだ。姿まで変えるはずはない。――姿を変えて逃げたものなら、やはり出雲屋に掛り合いの者か、茶番の仲間だ」

平次の言うのは道理です。変装する以上は、顔を知られたくない者の仕業に相違ありません。

「親分」

「もういい。――お前は誰かを助けたいんだろう、余計な事をすると藪蛇になるぜ」

「…………」

女は黙って頭を垂れました。

五

平次は足音高く谷中の方へ行くと見せて、そっと引返しました。朧の中を帰って行くお滝の姿が、何としても唯事ではなかったのです。

道は松の闇を過ぎて桜の朧に入りました。たゆたいがちなお滝の足取りから、平次は何やら読み取るような心持で、再び飛鳥山の方へ向いましたが、お滝は山に登る様子もなく、無関心に山裾を廻って、王子の町へ出ると、そのまま、後も振り向かずに、花見茶屋の佐野屋の暖簾を潜ります。

しばらく間をおいて、佐野屋へ入った平次。

「今ここへお滝が入ったようだが――」

うさんな眼を店中に配りました。

「これは、銭形の親分さんで。ヘエヘエ、ツイ今しがた、お滝姐さんが来ましたよ。何でも、色気違いに後をつけられて、うるさくって仕様がないから、裏口からそっと逃がしてくれ――という頼みで――」