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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 156,866 字 · 318 頁

青空文庫

声を立てたかも知れませんが、風呂場は二重戸で容易に外へは聴えず、下女のおさめが行ってみて、始めて大騒動になったのでした。

家族というのは本妻が五年前に死んで、奉公人からズルズルに直った妾のお直、――三十五という女盛りを、凄まじい厚化粧に塗り立てているのを始め、先妻の間に出来た一粒種の倅、万次郎と言って二十三、親父の万兵衛が顔負けのする道楽者と、主人万兵衛の弟で、店の支配をしている伝之助という四十男、それに、番頭の文次を始め、手代小僧、十幾人の多勢です。

「どんな証拠があるんで、金六兄哥」

風呂場の血潮の中から、拾った剃刀や、先刻居間に運んだばかりの、万兵衛の死体を見ながら、平次はまず金六に当ってみました。

「人は見掛けに寄らないと言うが、――こんな騒ぎがあって驚いたことは、甲州屋の家の者で、主人の万兵衛を殺し兼ねない者が四五人は居るぜ」

「ヘエ――」

「世間体は良い男だったが、通人とか、わけ知りとかいう者は、大方こうしたものだろう。お互に野暮ほど有難いものはねえ」

金六はすっかり感に堪えた姿です。

「どうしたんだ、洲崎の兄哥」

「妾のお直は二三日前から、出るの引くのという大喧嘩だ。