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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 156,866 字 · 318 頁

青空文庫

その次に呼出されたのは、主人の弟の五郎助でした。

「兄の五兵衛には、手ひどくお叱言を言われたそうだな」

平次は調子を変えて、この喰えないような中年男に相対します。

「滅茶滅茶にやられましたよ。費い込んだのはほんの五六十両で、それをあんなに泥捧扱いにされちゃかないません」

「それで怨みを言いに、昨夜ここへ来たのか」

「えッ」

「隠すな。本所のお屋敷を出た時刻を訊くまでもなく、俺にはよく解っている」

平次の言葉は自信に充ちております。

「…………」

「お前が兄を殺したとは思っちゃいない。――唯、ここで見た事を言いさえすればいいのだ」

「恐れ入りました、親分さん。――正直のところ私は、兄貴を打ち殺す積りでここへ来ました。酉刻半少し過ぎだったと思います。表は締っているので、裏へ廻って来ると、兄貴の部屋にはカンカンに灯が点いて、格子の外には、黒い人影が見えました」

「…………」

「私の足音を聞くと、人影はあわてて格子を離れ、あっと言う間にあの流れを飛び越して逃げてしまいました。――呆気に取られて格子の外から覗くと、兄貴は首筋を短刀で刺されて、もう息が絶えた様子――」

「それを見ぬ振りで帰ったのか」