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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 156,866 字 · 318 頁

青空文庫

一〇

桑原伊織は暗然として首を垂れました。

四十前後の立派な武士、妹の早瀬よりも人間味があって、何としても主殺しなどをしそうもない骨柄です。

「致し方がございません、お伴いたしましょう」

平次は立ち上がりました。続くガラッ八。

「お静、ちょっと鎌倉町へ行って来る。そのお客を頼むよ」

外へ出ると、格子の外には、涙を押えて、しょんぼり妹の早瀬が立っているのでした。

「来てはならぬと言うのに」

伊織の声は尖りました。

「私もお供いたします、兄上様」

「いや」

「御菓子に毒を入れたのは、私の仕業でございます」

「馬鹿なことを」

桑原伊織は取り合おうともしません。

「それでは、せめて兄上様御先途を見届けさせて下さいまし」

「…………」

伊織は、それもならぬとは言い兼ねました。

一〇

桑原伊織、その妹早瀬、平次とガラッ八が付添って、鎌倉町の源太郎の家に乗込んだのは昼少し前でした。

評定所へ駆込み訴えをしようと言う源太郎も、下手人が名乗って出たのを見ると、さすがに度胆を抜かれた様子で、

「そいつは面白い、侍の腹の切るのを見るのは始めてだ、皆んな来い」

源助、捨吉を始め、尻込みをする女どもまで呼び集めます。