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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 156,866 字 · 318 頁

青空文庫

縁側には宗七、少し脱俗した顔で、夕空を眺めております。

「その女はどこの者でしょう」

「親分、――これは言っていいか悪いかわかりませんが、一、二年前、丁子屋にそんな下女が居ましたよ、房州女で」

「今でも居るでしょうか」

「いえ、男癖が悪いので、出してしまいました。それから、河内屋や、馬場さんへも使って貰いたいとか言って立ち廻ったそうですが、誰も相手にしやしません」

「それはいいことを聞かして貰いました」

「でも、今頃あんな女が立ち廻るのは変じゃありませんか、親分」

「何かわけのある事でしょう。――ところで佐吉さん、お富さんは明日河内屋へ引取られるという話じゃありませんか」

「そんな話ですね」

佐吉は浮かない顔色です。

「お前さんは?」

「お富は何とか言ってくれますが、私は河内屋へ乗込むのはお断りしようかと思っていますよ」

「へ――エ」

「本当は、この家を日本橋の叔父のところに居る弟に譲って、私はお富と一緒に丁子屋の夫婦養子になるはずでしたが、お富が河内屋へ戻るとなると、話が違います」

「なるほど」

「丁子屋と油屋なら、借金の有ると無いとの違いだけで、家柄も店の格も、そんなに違やしませんが、河内屋では提灯と釣鐘です。