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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 156,866 字 · 318 頁

青空文庫

二

玉屋の息子の金五郎が、命がけの参りようで、貧乏人の娘を承知の上、貰うとか貰われるとか、町内の若い衆をワクワクさせていますぜ」

「そいつは初耳だ。何か筋が深そうじゃないか、行ってみるとしよう」

平次は立ち上がりました。が、煙草入を懐に入れて、お静に羽織を出させていると、

「今日は、――親分さんはいらっしゃいましょうか」

おずおずした声が入口に立っております。

二

「私は本郷一丁目の古道具屋与次郎でございます。お願いでございます、娘をお助け下さい。娘のお糸が盗人の疑いを受けて、大名屋敷へ引渡されそうになっております。引渡されたが最後、生きて帰りっこはありません」

そう言うのは、五十に近かろうと思われる見る蔭もない男、涙と鼻水と一緒にかなぐり上げて、一生懸命さが無精髯の面に溢れます。

ガラッ八の言った通り、右の脚は大怪我でもしたらしい跛で、生活に疲れ果てた顔には、いたましいやつれさえ見えます。

「娘がどうしたと言いなさるんだ。それだけじゃ解らない、落着いて話してみるがいい」

平次はさり気なく宥めて、ともかくも座を設けてやりました。

「有難うございます、親分さん。私はまア、どうなることかと思いましたが、フト思い付いたのは銭形の親分さんの事で、打明けてお願い申上げたら、ヒョッと助けて下さることもあろうかと――」