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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 156,866 字 · 318 頁

青空文庫

裸にしておけば、その晩のうちに気が付いたかも知れないのに」

「紐は結んでありましたか」

「確かに結んであったはずだが、今朝見ると解いたのをいい加減につくねて、正面から見ると結んであるように見せていた」

「よほど急いだのですね」

「…………」

金兵衛は平次の顔を見ました。紐を結んでなかったということが、何か手掛りの一つのように聞えたのです。

「隣の部屋に一と晩泊った者が盗ったのなら、紐ぐらい結ぶ隙はあったはずですね」

平次は明らかに、お糸の冤を、たった一本の真田紐で証明しようとしているのです。

「もっとも、お糸さんが誰かを手引して入れると別ですね、親分さん」

誰やら口を容れた者があります。振り返ると、平次の後ろに立っているのは三十前後のちょっと好い男、卑屈な薄笑いが薄い唇の上に残っております。

「お前さんは?」

「ヘエ、番頭の甚助でございます、ヘエ」

甚助は口の過ぎたのに気が付いたものか、揉手をしながら尻込みをしております。

「お糸をつれて来たそうだが、お上の御用も勤めるのかい」

平次の舌は辛辣でした。

「と、とんでもない。支配人の申付けで、よんどころなくあんな事を致しました、ヘエ」