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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 156,866 字 · 318 頁

青空文庫

「あッ」

なんという早業でしょう。大地を蹴って飛上がったとみるや、平次の手は伸びて武士の面上から、サッと覆面を引剥いだのです。

「や、そのほうは?」

驚く平次へ、間髪を容れず、――

「おのれッ」

サッと浴びせた一と太刀、平次は辛くも身をかわしましたが、あまりに近々と寄せた不覚で、袷の上から、左の肩先を少しばかり割かれました。

「御用ッ」

平次の唇から、始めて御用の声が漏れます。

「えいッ」

二度目の太刀、二三歩飛退いて、平次の懐中からは、得意の銭が取出されます。

「器用なことをしやがるッ、野郎ッ」

最初の投げ銭が眼と眼の間を打って、たじろぐ曲者。

「親分、我慢がならねえ、助太刀だッ」

ガラッ八は暗がりから飛出して、むずと曲者の後ろから組付きました。

二人がかりで縛った曲者は、遊び人の権三郎、あまりの事に、ガラッ八もしばらくは口が塞がりません。

それを送って、かすり傷の手当をした帰り、白々明けの街の露を踏んで、平次はこう話しました。

「今度ばかりは全く見当違いだったよ。権三郎と気が付いたら、劈頭から踏込んで縛るのに、三人の武家にばかり眼を付けて、とんだ手間取ってしまったよ」