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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十四)雛の別れ

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(十四)雛の別れ(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 114,139 字 · 233 頁

青空文庫

菅笠も柄杓も仕度をする間がありませんよ」

どんな無鉄砲な抜け詣りも、それくらいの用意はあるべきはずです。

「神隠しかな」

平次はいつの間にやら、坐り直しておりました。

「そんなものはあるでしょうか、親分」

人間が不意に見えなくなって、何日か何年かの後、ヒョックリ現れるのを、昔は羽黒や秋葉の天狗のせいにして、これを神隠しと言ったのです。その中には誘拐や、迷子や、記憶の喪失や、借金逃れもあったでしょうが、昔の人はそんな詮索をする気もないほど鷹揚だったのでしょう。

「…………」

「神や仏が、そんな虐たらしい事をする道理はないじゃありませんか、ね親分。五人の子供の親達の嘆きは、見ちゃいられませんよ」

「…………」

「何とかしてやって下さいよ」

「どこだえ、それは? いつのことなんだ」

平次はようやく乗出しました。

「本郷の菊坂で」

「フーム」

「三日前、よく晴れた夕方でしたよ。胸突坂の下で遊んでいた町内の子供が五人、どこへ潜り込んだか、しばらくの間に掻き消すように見えなくなったんですって――」

「遊んでいたのを、誰が見ていたんだ」

「空地で遊んでいたのを、多勢の人が見ていましたよ。