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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十四)雛の別れ

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(十四)雛の別れ(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 114,139 字 · 233 頁

青空文庫

六

「伏見屋の帳面をつけていた男で、三河町の三丁目に住んでいますよ。尺八は馬吉の先生で、不景気な野郎だが、字が滅法うまい」

「足はひどく悪いのか」

「一人で歩けないこともありませんが――」

「その春松の様子を捜って来てくれ、あの晩どこへ行ったか。そいつは大事なことだよ」

「ヘエ――」

ガラッ八は弾みが付いたように飛び出しました。いよいよ事件の山が見えたような気がしたのです。

六

ガラッ八の八五郎が三河町へ飛んで行った後、事件の重大な発展に気のついた平次は、自分もその後を追いました。

三河町三丁目で、足の悪い春松と訊くとすぐわかります。いいや近所で訊くまでもなく、とある路地の奥からひびき渡る八五郎の張り上げた声は、平次には何よりの栞になったのでした。

「やいやい、知らぬ存ぜぬで通ると思うか。あの晩お前が宵から消えて、夜中に帰って来たことは、長屋の衆が皆んな承知だぜ。どこへ行って来たんだ、真っ直ぐに白状しねエ」

「どこへも行きゃしません。――この足ですよ、親分」

ガラッ八の噛み付くような声と、春松の呟くような声が、悩ましい対照で、同じことを際限もなく繰り返しております。