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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十四)雛の別れ

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(十四)雛の別れ(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 114,139 字 · 233 頁

青空文庫

三

よしや子分の中に、異心を抱く者があったとしても、七十六の眼玉の光る中、明りの洪水を浴びた廊下を、どう工夫をして鐘五郎の部屋に近づくでしょう。

三

「銭形の兄哥、――こういう始末だ。溝口屋は確かに人手に掛って殺されたに違えねえが、締めきった奥の部屋へ、鼠一匹入った様子はないのだ。今さら鎌いたちでも済まされず、俺も今度という今度は兜を脱いだよ。日頃の誼、何とか智恵を貸してはくれまいか」

三河町の佐吉が、すっかり角を折って、そっと銭形の平次のところへ相談に来たのは、それから三日も経ってからのことでした。

「俺が行ったところで、大した役にも立つまいが、兄哥の気が済むなら――」

平次は思いのほか気軽に御輿をあげました。

「そいつは有難え」

いそいそと後を追うガラッ八の八五郎。

「お前の出る幕じゃないよ、おとなしく留守をするがいい」

平次は佐吉の気を兼ねて、一応は止めました。

「ヘエ――」

「不足らしい顔をするじゃないか。それじゃ外から溝口屋の評判を訊くがいい。溝口屋の評判はよくないようだから、うんと怨んでる者が一人や二人はあるだろう」

「ヘエ――」

ガラッ八の八五郎は平次の申付けに反き兼ねた様子で、途中からどこともなく逸れてしまいました。