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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十四)雛の別れ
野村 胡堂
線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(十四)雛の別れ(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 114,139 字 · 233 頁
「お前は今日帰るそうじゃないか」
「ハ、ハイ」
「奉公人の出代りは今日だろうが、この騒ぎの中から出られちゃ困るだろう。一応片付くまで帰るのを延ばしちゃどうだ」
「でも、あの、支配人さんが」
「支配人の半九郎が帰れというのか」
「…………」
「ところで、今朝雛壇の片付けを手伝ったのは、お前のでき心か、それとも誰かに頼まれたのか」
「お雛様の始末だけは、いつでもお嬢様がなさいます。でも今日はひどくお気分が悪そうでしたから、私が手伝って上げると、お万さんも来て、一緒に片付けてくれました」
「倉へ行ったのは、お前が先だったというじゃないか」
「え、――私のは箱が大きくて入れなかったので、倉の入口でお万さんが先になりました」
その時のことを思い出したか、お文はさすがに顫えている様子です。
「お前はこの家に何年奉公しているんだ」
「今日でちょうど三年になります」
「家へ帰りたいのか」
「いえ、――でも」
平次を見士げた賢い眼には、涙を含んでおります。粗末な木綿物を着て、白粉っ気もないこの平凡な娘に、不思議に清らかな魅力を見出して、平次はいろいろのことを考えさせられました。
その日の調べは、それで切り上げる外はありません。