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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十四)雛の別れ

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(十四)雛の別れ(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 114,139 字 · 233 頁

青空文庫

銭形平次捕物控

一

一

「お早う」

ガラッ八の八五郎は、尋常な挨拶をして、慎み深く入って来ると、お静のくんで出した温かい茶を、お薬湯のように押し戴いて、二た口三口啜りながら、上眼づかいに四辺を見廻すのでした。

「どうした八、たいそう御行儀が良いようだが、何か変ったことでもあったのかい」

銭形平次は縁側に寝そべったまま、冬の日向を楽しんでおりましたが、ガラッ八の尤もらしい顔を見ると、悪戯っ気がコミ上げてくる様子で、頬杖を突いた顔をこちらへねじ向けました。

「何でもありませんよ。ほんのちょいとしたことで」

「そうじゃあるまい、何かお前思い込んでいるだろう。借金取りに追っかけられるとか、義理が悪い昔馴染に取っちめられたとか」

「そんな事じゃありません」

「だって、急に起居振舞が小笠原流になったり、膝っ小僧がハミ出してるくせに、日本一の鹿爪らしい顔をしたり、お前よほどあわてているんだろう」

「なアに、ほんのちょいとした事があっただけですよ」

「何だそのちょいとした事てえのは? 気になるぜ、八」

「実はね、親分」

「恐ろしく突き詰めた顔をするじゃないか。何だい」

「笹屋のお松が三輪の親分に縛られたんですよ」