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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十四)雛の別れ

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(十四)雛の別れ(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 114,139 字 · 233 頁

青空文庫

娘は途方に暮れた様子です。

身装は気の毒なほど粗末ですが、十七八の美しい娘で、あどけなく可愛らしいうちにも、武家の出らしい、品のよさが、好感を持たせます。

「これ、――茂野、――お上の御用を承る方なら、お通し申すがよい。むさ苦しいところだが――」

破れた唐紙一重を隔てて、主人の勇名は声を掛けました。ひどい咳に悩まされて、そう言う声も途切れがちです。

「では、――あの、父はお話しなんかしますと、すぐ疲れますが――」

娘――茂野は、眼を挙げて、救いを求めるように平次を見上げながら、道を開きました。

「御免下さい。御病気のところをとんだ御邪魔をしますが、実は福井町の城弾三郎様がゆうべ平右衛門町で殺されましたので」

「えッ」

主人――高木勇名の驚きは大袈裟でした。見る影もなくやつれ果てて、明日も知れぬ命と見えた大病人が、半身を起き直るように枕の上に乗り出したのです。

「旦那は御存じでしょうな、城という人を」

「よく知っている。――天罰だな」

高木勇名は疲れ果てた様子で、ガクリと枕の上に頬を落しました。熱っぽい匂いが室中に籠って、ムッと鼻を打ちます。

「その城弾三郎という人が生きているころ、旦那様をひどく怨んで、出逢いしだい討ち果すと言っていたそうですが、御存じでしょうな」