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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十四)雛の別れ

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(十四)雛の別れ(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 114,139 字 · 233 頁

青空文庫

三

江戸の賑わいを集め尽したような浅草の雑沓は、この意味もなく見えるささやかな事件を押し包んで、活きた坩堝のように、刻々新しい沸りを巻き返すのです。

三

「ここまで見て、お前は引揚げたんだろう」

平次はガラッ八のぼっとした顔を顧みました。

「あの娘をつけてみましたが、御隠殿裏へ真っ直ぐに帰るだけで、何の変哲もありませんよ。江戸の真ん中じゃ、真昼の天道様に照らされて、どんな送り狼だって、業はできません」

ガラッ八は長い顎を撫でるのです。

「何を言うんだ。娘のことじゃない。あれだよ」

「ヘエ――」

平次は粂の平内様のお堂を指しながら続けました。

「あの格子に、たくさん御神籤が結んであるだろう。縁結びのまじないにされているんだ。古いの新しいの、勘定しきれないほどあるが、たった一つ変ったのがあるはずだ」

「?」

「端っこをちょいと紅で染めた御神籤だよ――天地紅の御神籤なんかどこのお寺へ行ったって出るものじゃない」

「ヘエ――」

「あの娘は観音様の本堂からここまで来るあいだに、御神籤の端を染める暇がなかったはずだ」

「?」

「だが、あの御神籤は前には無かったことは確かだ。やはりあの娘が結わえたんだ。