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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十四)雛の別れ

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(十四)雛の別れ(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 114,139 字 · 233 頁

青空文庫

親の敵を討とうとしたのは、この勝之助の浅はかさでございました。それでは、私はこのまま退転いたします。奥方様には、今夜のうちに駒形のお屋敷にお帰り遊ばし、明日は晴れて殿様の御入府をお迎え遊ばすよう」

勝之助は畳に双手を落すのです。ハラハラと膝を洗うのは、若さと純情さに溢れる涙でした。

「ありがとう、勝之助、何もかもお前のお蔭。――折があったら帰っておくれ。――殿様へは、私からよく申します」

奥方は蒼白い顔を挙げました。激情に顫えますが、限りなく上品な美しさです。

「では、奥方様」

「お待ち、これは、せめても私の志」

奥方は手文庫から、持重りのする金包を出して、ひた泣く勝之助に押しやります。

後には貰い泣きのお菊と平次。――ガラッ八の八五郎も隣の部屋で大きく鼻を啜っているのです。

*

明る日は奥方浪乃、屋敷に帰って良人久野将監を迎え、事件の顛末を、人を傷つけない程度に報告しました。妾のお新が、そのまま行方知れずになったことは言うまでもありません。

一件落着の後、ガラッ八の八五郎は、

「市太郎は本当に自害したんですか、親分」

割り切れない顔を平次にブチまけるのです。