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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十四)雛の別れ

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(十四)雛の別れ(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 114,139 字 · 233 頁

青空文庫

「何だ何だ」

木戸の外から声を掛けたのは、庭下駄をつっかけて、房楊子をくわえた浪人者の石巻左陣でした。三十二三の総髪、袋物の内職もやれば下手な占いもやるといった、器用貧乏の見本のような男、武芸も学問も大したものではない代り、口前と男前だけは相応です。

「あ、石巻さん、主人が――」

宗助は助け舟が欲しそうに乗出しました。

「これは大変。――だが、そんなに荒らしちゃ後が困る、無暗に足跡をつけないように。――それから、外科と町役人に飛ぶんだ。若旦那はどうした、この騒ぎの中に見えないようだが」

さすがに浪人者の左陣は落着いております。

「蔵の二階ですよ」

お半は口惜しそうでした。

「そいつは一番先に出さなきゃ。――窮命も時によりけりだ」

こうなると石巻左陣が命令者でした。

一人は外科へ、一人は町役人へ、一人は土蔵の扉を開けて若旦那の染五郎を出すため、左陣は生湿りの路地に足跡をつけるのを嫌って、大廻りに店口の方から入って来ました。

まもなく飛んで来た外科は、一と眼に引導を渡してしまいました。傷は後ろから一と突きしたもの、たぶん声も立てずに死んだことでしょう。それと前後して、町役人と一緒に乗込んで来たのはガラッ八の八五郎でした。