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なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(一)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 262,100 字 · 523 頁

青空文庫

だまり合い

「あッ――」と、一方が引かれた間に、お綱は、素早く逃げ退いた。

檜林から笹むらへ、お綱の迅さは飛鳥のよう。

「ツ、ツ、ツッ……」と、喉の捕縄をつかみながら、孫兵衛だけは、弦を張られた弓の形に、そこへ、食いとめられてしまった。

だまり合い

お綱にばかり気をとられていたところへ、不意に、投げての知れない捕縄が飛んできて、自分の頸すじへ引っ絡んだので、さすがの孫兵衛も、罠へかかッた獣のようにうろたえた。

すばやく、お綱が逃げた、とは知ったが、それを追うどころでなく、左の拇指で、肉へ食いこむ縄の力を撓めながら、あおむけざまに踏みこたえる。

喉の筋は蚯蚓のように太り、面は充血して、みるみるうちに朱を注いだ。そして、

「うッ! ……」と、息を絞り、必死に縄を抜けようとあせっていると、ふたたび。

「や、畜生ッ」という物蔭の声があった。

捕縄の一端から、電流のような力がピンと張ってくると、孫兵衛は、踵を土にめりこましたまま、ズルズルと二、三尺うしろへ引かれた。

「ウーム」と、最後の一息を呻いた時、反れるだけ反り返った孫兵衛は、片手を助広の差添へかけるや否や、渾身から気合いをしぼって、ぱッと一つ身を捻った。