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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(一)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 262,100 字 · 523 頁
「即答、または評議中、御返事まちまちではありますが、今日まで内諾あった諸国諸侯の御連名……」と年長の交野左京太夫、ふところを探って細長い包みを解き、帛紗を敷いてその上へ、スラリと一巻の連名状を繰り展げた。
「三位殿、御苦労ながら」
阿波守が目くばせすると、
「は」立ってあたりに人なきやをたしかめ、縁の端に坐りなおして見張役となる。
世が世なら竹屋三位卿も、九重の歌会、王廟の政治に参じる身分、まさか、見張番まで勤めるのでもあるまいが、朝廷の御衰微今より甚しきはなく、公卿の無視さるること幕府の小役人にも劣ってきた今の世が世である。是非がない時勢なのである。
「食客だからと思えば癪にさわるが、これも一天の君の御為と思えば……」
三位卿は、かこち顔な見張の端居。
「おお……」と乗りだして扇子をつき、連名状へ眼を落した阿波守、三卿とともに息をのんで、ズーと血判をたどりながら、
「盟主、徳大寺公城公!」固唾をのんで呟いた。
「堂上お味方二十七家、事いよいよに迫りますれば、京方すべてを含みます」と左馬頭がそれに応じる。
「宇治に在す竹内式部先生!」
「軍師と仰ぎますつもり」
「江戸表は山県大弐、まッ先に火を放って、箱根の嶮に王軍を待つの計か」