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なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(一)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 262,100 字 · 523 頁

青空文庫

「そこでバッタリおれが出会ったわけ――」とすぐ孫兵衛が話を足すと、一座の中から半畳が出て、

「じゃ、兄貴も一人の筈はない、いろは茶屋のお品か誰かを連れこみで行ったのだろうが」

「お手の筋だ。しかし、売女のお品と江戸前のお綱とは芥子に牡丹ほどの違いがある。すぐ片ッ方は追い返してしまった」

「おやおや、怖れ入った浮気振り、じゃ昨夜はお綱さんとよろしくあって、見せびらかしにここへ来たという寸法か。何だかこっちは面白くもねえ」

「ところがこのお嬢様、見かけに寄らない心締りで、実はおれも、見事に肱を食っているのだ」

「やれ、それでこっちも、安心した」と笑いくずれている間に、お綱は細い指尖へ、加留多の札を四、五枚取ってながめていた。

「三次さん、これはやっぱり花加留多?」

「長崎から流行って来たやつさ、異国のものでね」

「面白そうだこと、やって見ようか」

「どうしてどうして、男同士の勝負ごと、はした金ではすまないぜ」

「こればかしじゃ足らないかしら?」帯の間から、手の切れそうな百両の封金をコロリと三つ。五人は思わず膝を退らせ、狡猾な眼色を慾に燃え立たせる。

天井裏では、欄間の金網から猫目を光らしている万吉。