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なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(一)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 262,100 字 · 523 頁

青空文庫

と笑いつづけ、かつ、笑いながら手を離して、いかにも軽快な言葉づかい、

「いや、これはこれは」といったものである。

「お見うけ申すところ、どなたかは知らぬが、ご風采も賤しからぬ様子。まさか、空巣狙いではござるまい。何で拙者の屋敷へ、無断でお踏みこみなさるか、仔細がござろう、それをお聞かせ願いたい」

こう真面目になられると孫兵衛も弱った。

「いや……」と襟を掻き合せながら、「武士にあるまじき無作法をして、慇懃な武士扱いをなされては、なんと面目もない次第で」

「いやいや、拙者は常に外出勝ち、事情によってはお咎めも致すまい。何かこのほうの屋敷内に、急な御用事でもありますかな」

若いけれど旅川周馬、総髪で納まっているだけに、なかなか能弁で如才がない。お十夜の腕と殺念の燃えた気ぶりを、巧みにかわした上、こういいながら、おもむろに相手の真意を読もうとする眼ざし。ここに猫をかぶった悪玉と悪玉とが、双方、微妙な腹探りをやりだした。

「されば」

と孫兵衛、まことに神妙な様子でいう。

「実は手前の女房が、お屋敷のうちにおりますので、それを訪ねてまいりました」

「ほほう……これは異なことを」