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なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(一)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 262,100 字 · 523 頁

青空文庫

「ふウム……」と聞いていたが機嫌が悪い。

「よろしくない心配だな。目明しの居所知らず、または岡ッ引の起き抜け千里などと申して、職業がら是非ないことだ。それを四日や五日帰らぬとて、すぐ女房が妬くようでは、万吉の十手が錆るというものだ」

一八郎は叱ったが、だんだんに、お吉が話すところを聞くと、どうも叱ったほうが少し無理らしい。

京橋口で、万吉の名が彫ってある十手を拾って、届けてくれた者がある。その前夜、土筆屋で見かけたという者もあるので訊き糺すと、江戸の客をつけて行ったという話。また、その客の連れ唐草銀五郎という者も、多度津へ立った後なので、何の事件か皆目知れず、前後の事情、どうも万吉の凶事ではないかという――お吉の心配なのであった。

「なるほど――」一八郎の顔色も少し怪しくなった。

「ふウ……そうか、いやよろしい、心配せずと家へ帰って吉報を待つがよい」

お吉を帰すと、彼はやがて、選りすぐった小鳩を一羽ふところに入れ、初夏の陽がかがやかしい青田や梨の木畑の道を急いで、異人墓の丘へ登って行った。

異人墓の丘に立って、汗を拭いた一八郎。

「うむ、いいな……」思わず眸を四方へ馳せた。