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なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(一)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 262,100 字 · 523 頁

青空文庫

「お綱は?」

と、周馬は義理でたずねると、孫兵衛は刀を鞘に納めながら、

「ちょっと当身をくれておいた」

悦に入った顔である。もう、あの女はどこへ持って行こうが、どうしようが、完全におれのものだと安んじているものらしい。

「それはよかった。だが、万吉とかいう奴は? ……大丈夫だろうな」

「なアに、この寒さだ。川の水を食らって、たいがい凍え死んでしまうにきまっている。――ところで周馬、お前はその女を引っ抱えて、これからどこへ落ちつく気だ」

「なにしろ、かんじんな巣から焼け出されてしまったので、それにはこのほうも当惑いたした」

「まさか、お千絵様とかいう別嬪を抱いて、そこらへ野宿もできねえしなあ」

「しかたがないから、一時、喜撰風呂の奥でも借りて、そこへ隠しておくとしようか」

「永えことはおられねえが、それも一時の妙案だろう。女をきれいに洗い上げて、ゆっくり楽しむには誂え向きだ……。ウム。おれもお綱を連れて、一緒にそこへ落ちつくとしよう」

「だが、どうする、途中を?」

なるほど、いくら惚れた女にしても、あの通りな火事騒ぎの中を、背中に掛けて京橋まで歩いちゃ行かれなかった。