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なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(一)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 262,100 字 · 523 頁

青空文庫

弦之丞が右すれば右へ――辻で立ちどまれば止まり、歩めばそれに従いて歩みだすのである。いわゆる影の形に添うごとく、どこまでも後をつけまわして行った。

その者こそ、蜂須賀阿波守から、弦之丞を刺殺せよと命ぜられて、大阪表から後になり先になって、ここまで尾行してきた原士の天堂一角だ。

五十三次の宿駅をこえてくる間に、かれは幾度か、弦之丞の身に接近したが、遂にここまで斬りつける隙がなかった。

一角の目算ははずれていた。

相手の姿が江戸の雑沓へまぎれこむと、容易に討ち難くもあり、影もくらまされる怖れもあるので、ぜひとも、東海道を旅する間に、討ってしまうつもりでいたのが――とうとうそれを果たされなかった。

「今日こそ、どこかで――」

一角の殺意はしきりと動いていた。折から相手の弦之丞は、都合よく人通りのある道を避けて、芝の山内へ歩いてゆく様子――、増上寺の山内は、もうドップリと暮れていた。

と――先にゆく弦之丞は、

「また一角がつけて来るな……うるさい奴」

と、舌うちをした。

かれは後から身を狙っている刺客のあることを、とうに覚っていたのである。

「――はて、どうしてくりょう」