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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(一)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 262,100 字 · 523 頁
常木流の捕縄術は自他共にゆるす名人。しかし今は捕るより斬れの場合として、抜くやまたたく由造を薙ぎ、浪人者の隼人の腕を斬り落した。
そればかりか、塀の外では、
「御用ッ、御用ッ」とさかんなかけ声。いよいよ輩は度を失い、孫兵衛一人の悪戦加わるばかりである。
だが、役付でない鴻山や一八郎が、かく早速な捕手を連れてきたのも不審――と外を見ると、捕手はいない、すぐ前の木立の蔭に、たッた一人の男が腰をかけている。
細い丁髷、細い顎。異人墓から同行してきた平賀源内である。医者で作者で侍で商法家だが、一つ武芸者ではなかりし源内、快刀乱麻の手伝いはできないので、時々そこから、
「御用ッ、御用ッ」
といっては、支那扇子で顎を煽いでいる。
荷抜屋屋敷へ真昼の不意を襲った剣戟の旋風は、一瞬の間に去ってしまった。囲いの中に、喚きや雑音の騒動がハタとやむと、後はまたもとに返ってソヨともしない森の静けさ――住吉村の奥らしく、ジーッと気懶い蝉時雨。
「源内どの! 源内殿!」
彼方で呼ぶ声に腰を上げて、平賀源内、唐人扇子をパチリとつぼめて帯へ差し、
「ははあ、片づいたとみえるな」
踏み壊された木戸口から、大急ぎに飛び込んだ。