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なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(一)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 262,100 字 · 523 頁

青空文庫

「お三輪坊……」と、側へよった。

「いッたい、どうして、こんな大金を虎さんが持っているのか、お前、なんだか知っていそうだね……」

「ええ。知っている」

お三輪は、率直に答えていう。

「こないだの晩、お綱姉ちゃんが、窓の下へきて、ソッと、あたいにくれて行ったの……」

「えっ、お綱さんがかい?」と、みんな顔を見あわせて――「なんだッて、お前にそれを渡して行ったの」

「このお金で、廓にいる、小ちゃい姉ちゃんを落籍して、あとのお金で店でも出して、みんなで仲よく働いてお暮らしよ――、そうして、細かいことは、この手紙に書いてあるから、お父さんが帰ったら、よく、読ンでくれるように、頼むンだよ……って、そういったまま――」

話しているうちに、お三輪はシクシクしゃくりあげて、後のことは言いにくそうに、蒲団の中へ顔を埋めた。

「ふウーム……」と、等しく、長屋の者が、目と目を見あわせていると、今まで、昏々としていた紋日の虎。

「ア痛……、ア痛ててて……」と、苦悶の皺を深くよせて、火のような喘ぎと一緒に、なんとしてか、ポロポロと涙を流した。

「す、すまねえ。……お綱にすまねえ、お長屋の衆、後生ですから、わっしが目をつぶる前に、あいつに一目会わして下せえ。