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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(一)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 262,100 字 · 523 頁
一月寺といえば、根岸の奥、誰か一走り行ってこい――イヤ、あぶないぞという者がある。アレは名うてな女スリ、この辺へ立ち廻ったら届けろという五人組のお沙汰だ。
といって、死なんとする善き声を、無情にほうッてもおけまい、長屋一同が口どめの誓約をして、今夜こッそり呼んできて、すぐ帰したら、まさか、番屋へも知れやしまい。
よかろう、ではこのことを、他言するような不人情者は、この孔雀長屋からお構いだぞ。――というので、
「オイ、虎さん。今お綱さんを呼んできてやるから、それまで、気をしっかりしていなよ。いいかい!」
と、中で、年の若い男が、尻切れ草履を突ッかけて、あたふたと、長屋の路次を飛びだして行った。
* * *
目安箱の上書が効を奏して、楓の間の密議となり、元京都所司代であった松平輝高は、召されて将軍家から内々に秘命をうけた。
その結果。
法月弦之丞は、松平家から火急な使者をうけて、いよいよ吉報と、よろこんで駈けつけたが、不思議や、そのまま行方不明となってしまった。
よもやに引かれて、今日は帰るか、明日は松平家から、なんとか沙汰があるかと、一月寺の宿院には、万吉とお綱とが、痩せる思いで待っている。