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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(一)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 262,100 字 · 523 頁
怖ろしい運命の神籤でもひくように、お綱が、こわごわと、その一通を手に拾ってみると、なつかしや、死んだ母の名。
お才どのへ。
また、一ツの手紙を取ってみると、それにも同じ手蹟で同じように。
お才どのへ。
としてあった。
そして、順々に、見ては膝へのせながら、何気なく、最後に拾った一本の手紙の裏――。
「万吉さん、――ちょ、ちょッと体を少し避けて」
御堂の内陣から洩れる灯りの方へ、その手紙をさし向けて、お綱がおののく手に持ったのを見ると、ああ、それはなんという不思議な人の名――不思議な輪廻のあらわれであろう。
甲賀世阿弥。
――と書いてある。
甲賀世阿弥?
甲賀世阿弥?
なん度ジイと読み返してみても、それはやはり甲賀世阿弥としか読めない。
だが、しかし! これはまたどうしたということだろう。
甲賀世阿弥といえば、今さら、こと新しく考えだすまでもなく、幕府笹の間づめ甲賀組宗家の人。お千絵様の父なる人。そして、阿波の間者牢に囚われたまま、十年あまりも生死の消息をすら絶たれていた人。
また近くは法月弦之丞が、大府の秘命をふくんで、深秘の間者牢を訪れるべく、単身江戸を立って行った目標の人ではないか。