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あかくら
中谷宇吉郎集 第一巻
中谷 宇吉郎
線上閱讀中谷 宇吉郎《中谷宇吉郎集 第一巻(あかくら)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 107,056 字 · 223 頁
冬彦夜話
『猫』の寒月君『三四郎』の野々宮さんの話の素材が吉村冬彦(寺田寅彦)先生から供給されたものであるという話は、前に書いた通りである。漱石先生と冬彦との関係は、冬彦先生自身が書かれた「夏目漱石先生の追憶」の中に詳しく述べられている。私は丁度大正十二年の暮から四年余りの間冬彦先生の下で働いていたことがあって、その頃度々、曙町の応接間で色々の話を伺ったのであるが、その中で冬彦先生自身が語られた漱石先生の話を次に書き抜いてみることとする。もっともその話の中の一部は、前述の「追憶」の中に書かれてあるが、同じ話でも書かれたものと話されたものとではかなり表現が違うし、話されたものの方が、余計に両先生の私的な交情が現われているように思われるので、多少の重複をかまわず書き止めておくこととする。
ある晩のこと私はいつものように曙町の先生の御宅を訪ねた。初めにしばらく応接間で待っていると、先生は「ヤア」といって這入ってこられて、黙って卓の上の敷島を一本とって火を点けながら、ふいと立って隣の書斎へ行ってしまわれた。少し呆気にとられていると、古い革の手提鞄を持って出て来られたのであるが、その中には漱石先生の自筆の水彩の絵葉書だの手紙だのが沢山はいっていた。