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あかくら

中谷宇吉郎集 第一巻

中谷 宇吉郎

線上閱讀中谷 宇吉郎《中谷宇吉郎集 第一巻(あかくら)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 107,056 字 · 223 頁

青空文庫

一 その頃の応接間

一 その頃の応接間

その頃の応接間は現在の姿と別に変った所はなかったので、その内部の様子などを詳しく書くのは少し御迷惑なことかも知れないが、これから後の話には、その話が醸し出される雰囲気の説明がかなり重要な要件になると思われるので、押して簡単な叙景をすることとする。まず壁には色々いわれのある油絵が三枚ばかり掛っていて、その外に先生御自身の描かれた小さい絵が時々取り換えられて一枚ないし二枚位掛けられてあった。片隅にはピアノが置いてあって、その上には随分使い汚された楽譜が一杯に積み重ねられていた。今一方の隅には随筆に書かれた蓄音機が置かれてあり、その前には楽譜台とバイオリンのケースとが乱雑に立っていた。外には印度更紗の壁飾りと、壺が一つ室の装飾品として置かれてあった。

部屋の真中には掛心地良い細身の肱掛椅子が卓を挟んであり、その一方に先生が、その頃はよくジャケツ風なコートを着込んで煙草を吹かしておられたものであった。夜など少し早めに伺うと、夕食の後らしくバイオリンを弾いておられた。しげしげ伺うようになってからは先生も大分気安く、バイオリンを弾きながらちょっと頤でしゃくって椅子に腰を下すように命ぜられて、真面目臭った顔付でバイオリンを続けられていたようなこともあった。