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にんきょうにとうりゅう

任侠二刀流

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《任侠二刀流(にんきょうにとうりゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 頁

青空文庫

「あいよ」と云うと荻野八重梅、鏡台の前へスルスルと行き、覗き込んだがニッと笑った。「綺麗だねえ、自分ながら」

「ほんとにお師匠さんはお綺麗で」うしろから小仙が声をかけた。

「どうだろう、人一人殺せるかしら?」

「え?」と眼を円くする女弟子の小仙。

「トロトロトロトロと妾の眼が、その男の顔へ笑いかけたら、どうだろうねえと云うことさ。……でもねえ」と妙にしんみりとなった。「不思議なものさ、馴染を重ねると、そうでもなかった人までが、ちょっと恋しくなるものだねえ」

「おノロケね、ご馳走様」

「ふん」と八重梅鼻で刎ねたが、その鼻の上を二つ三つ、牡丹刷毛で叩いたものである。「ましてあの人は最初から、妾には好きな人だったのさ」

楽屋を出ると廊下になる。梯子を下りると舞台裏、そこを通って裏庭へ出た。切り戸口を出ると一丁の駕籠。

「ご苦労だねえ、駕籠屋さん。急いで武蔵野までやっておくれよ」

駕籠が上がって駆け出したが、その武蔵野という茶屋の奥に、さっきから待っている若侍があった。

待つ身の辛さ幹之介

ここも盛り場、富士見原、遊女屋、蔭間茶屋、葉茶屋の類、軒を並べて賑やかである。

少し奥まって一軒の茶屋、武蔵野と云って一流だ、前庭が広く木立が茂り、石燈籠などが置いてある。