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おおおかえちぜん
大岡越前
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《大岡越前(おおおかえちぜん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 218,436 字 · 437 頁
「ちょうど、その晩、来合せていた主殿様が、賊を追って、かえって、賊の仲間に、闇打ちをくい、右の脚に、お怪我をなされ、兵九郎様のお葬儀がすむまでは、ここで手当てをしておいでになりましたが、何でもお上へ二た月ほどのお暇を願って、叔父御さまの御遺骨を、高野山へ納めに行くと仰っしゃって、つい両三日前、お旅立ちなさいましたよ」
この大変を新たに聞いて、市十郎はいよいよ、生きていられない自分を知った。その夜の賊は、自分なのだ。自分が、叔父を殺したのも同じである。
苛責と懊悩に、のべつ追い廻されているように、彼は、死に場所を探し歩いた。だが、死を考えているうちは、まだ死ねなかった。
お袖のことさえ、いまだに未練があった。よその子を見ればお燕を考え出す。――そしてまた、赤坂の養父を思い、お縫にもすまないと思い、心で掌を合せたりした。
煩悩は、煩悩を生み、その間だけは、死を忘れている。そして、飢えと、寒さに打たれながら、夜は、浮浪者の中に交じって寝た。飢えに迫って、食物を獲るためには、彼も、浮浪者と同じような行為をやった。
かくて、いまの市十郎は、市十郎であって市十郎でないような人間に変っていた。