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おおおかえちぜん
大岡越前
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《大岡越前(おおおかえちぜん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 218,436 字 · 437 頁
その点で、この頃は、江戸の町名主や五人組の町年寄たちのあいだに、
(和合大岡。鬼出雲)
などという隠語がつかわれたりしていた。
北の中山出雲守の白洲へ持ち出した公事は、たいがい喧嘩が大きくなり、その一方が、徹底的な悪人になった。
――だが、越前守の真意は、そんな功や成績にはなく、ひたすら、法のいらない世間、罪人のいない牢舎の実現が、理想であった。もとより、それは、理想にはすぎないとしても、それに近い社会をのぞむことが、法官の任としていた。
それにはどうしても、現実の罪悪の府から大罪小罪の人間どもを狩りあげるよりも、まず、罪悪の苗床からその素因をのぞいてゆかなければ――と考えられ、そのためには、市政、わけて社会政策に、心をくだかずにいられない。
とはいえ。志すのは道は遠く、いまや、かえって、かれ自身が、かれを裁かなければならないような――複雑な難題が、かれを囲み、かれの机にも、のっている。
かれは、屈しなかった。不撓の勇をふるいおこして、日々、自己の裁きに、対っていた。
「お奉行」
と、そこへ次室からの声。
「たれだ」
「左右太めでございます。おさしつかえございませぬか」