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おおおかえちぜん

大岡越前

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《大岡越前(おおおかえちぜん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 218,436 字 · 437 頁

青空文庫

――と思ったので、左右太は、相愛の感情とは、関りなく、楽翁と義平太父子の、切ない立場を、つぶさに話した。

感傷になり易いのは、恋している女性の常だが、今夜のお次は、わけても涙もろい。どうしたのか、しきりに泣いて、なかなか肝腎な答えには、触れて来ない。

「え。お次さん……。その藪八という奇怪な武家が、石焼豆腐で夕方から一酌やっていたと、自分でいっていたわけだ。思いつきの出まかせにしては、乗っていた駕籠との縁がありすぎる。……何か、思いあたることはないかね」

「そのお武家なら、たしかに、うちにおりました」

「えっ。ではやっぱり、夕方から来ていたのか」

「楽翁さまを乗せて来た駕籠の衆よりは、すこし遅れて、やはり同じかご寅の若い衆が、駕籠でお連れして来た方です」

「へえ。……そして」

「楽翁どのと、ここで落ち合う約束をしてあるので、夜中、すまないが、座敷を貸してくれいと仰っしゃって」

「楽翁どのを待っていたわけだな」

「――ですが、楽翁さまのお声が外ですると、ここでは、何も話さずに、すぐ御一緒に、戸表へ出て、一つの灯は、お濠端の方へ。一つは数寄屋橋御門外のほうへ、別れ別れに、お帰りになりました」