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おおおかえちぜん

大岡越前

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《大岡越前(おおおかえちぜん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 218,436 字 · 437 頁

青空文庫

「やはり、北町奉行の輩が、越前を追い陥すため、誇大にいいふらしおるせいか」

「いやいや、左様ばかりでもございませぬ。越前自身が、敢て、自分の過去を、つつもうともせず、飽くまで、事件の真相を、洗いたてておるからでございます」

「さすれば、かれ自身、失脚するのみか、ふたたび世に出ることはできまいに」

「法の正明を守るためには、失脚などはおろか、おそらく、死を決して、当っておるものと思われます」

「おそろしい奴のう……」と、苦笑しながらも、何か、内心の焦躁を、眉にたたえ、

「――藪八。よくないな」

「何がでございますか」

「老中どもや、寺社奉行などの噂を通じ、それとなく、吉宗の耳へ、越前の過去の非行を、大げさに伝えてくる者は、常に、越前を功名争いの敵としておる北町奉行の輩と思わるるが」

「御明察のように思われます。が、その辺のこと、まことに微妙で」

「……と、いたせば、左様なことで、かれらに凱歌をあげさせるのは、役人根性の助長というもの。後々の、弊害も大きい」

「てまえも、心をくだきおりますものの、何せい、明らかな、事実があるので」

「藪八は、智者ではなかったかの。……頼もしからぬ奴ではあるよ」