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おおおかえちぜん

大岡越前

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《大岡越前(おおおかえちぜん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 218,436 字 · 437 頁

青空文庫

――たしかに、あいつは、人間が変ったらしい」

「久助さん……」

お袖は、紅く濡れた眼をあげて――

「だから、わたしは、あのひとに捨てられても、仕方がないっておいいなの」

「そ、そんな、おッかない眼をして、おれに喰ってかかっても、おれは知らないよ。……が、もともと、三千石の御養子なんぞに、おまえが、かまわれたのが、悪縁さ」

「なにさッ。――三千石が何さ!」

「おや。怒ったのかい」

「あたりまえ……」

と、お袖は、泣く子の顔へ顔を伏せて、泣きじゃくった。

「お、おまえなんか……久助さんなんか、知ったことじゃあるものか。わたしと、市十郎さまとの仲は、そ、そんな水くさいんじゃありませんよ」

「あれ。まだあんなことをいってらあ。……じゃあ、罪だから、いッそ、はっきりいってしまうが、市十郎は、きょうこの久助に、こういったんだぜ」

「あのひとが」

「うむ。おれにいうのさ。――自分は、ふかく前非を悔いて、お袖のことも、今はまったく思い切っている。ふたりの仲に生した子は、どうか、よそへやって、お袖も、他によい男をもってくれ。やがて、自分で金の都合のつく身になったらば、手切れもやろう、子どもの仕送りもするほどに――と」