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おおおかえちぜん

大岡越前

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《大岡越前(おおおかえちぜん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 218,436 字 · 437 頁

青空文庫

「ううウむ……」

と、かれは伸びをして、何か堪えきれぬ心のものを誤魔化しながら、むくと、起きかけると、

「ま。……なぜだろ、この人は」

と、女は寝たまま、双手を彼の首すじへからませ、いきなり下へ抱き仆した。

すると、蒲団の横に立ててある小屏風の上から、連れの亀次郎が、ぬウと首をのばして、

「おや、お隣りは?」

「あら、覗いちゃいけないよ。それでなくても、この坊やは……」

と、女はその恰好のまま、ことさら、市十郎の首のねを、ぎゅうぎゅう、息づまるほど抱きしめて、

「初心ッていうのか、臆病なのか、それともわたしが嫌いなのか、ゆうべから、わたしを振ッて。……これこのとおり、このひとは、縮まってばかりいて」

「どれどれ。どんなふうに」

ゆうべからの悪遊びだが、大亀はまだ気分を醒ましていない。屏風越しに、肱をのばして、蒲団をめくりかけた。女も市十郎も、とび起きた。とたんにまた、大亀も、屏風と一しょにぶっ仆れて、二人の上へ折り重なった。

「――あら、あらっ。ま。ひどい……」

屏風の蔭だった所からも、またべつな女が飛び起きた。小屏風一つを境にして、そこにも二つの枕がころがっている。